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むらたま別館 ウォンキュ小説
高架門で 13



もしも…
もしもここにタイムマシンがあったら、僕は過去に戻りたいだろうか。
ずっと会いたかった。
いや、もう会いたくなかった。
彼女の隣で笑う眩しい君の笑顔を僕は覚えてる。

一緒に歩いた銀杏並木の通学路。
いつも笑って過ごした教室。
日が沈むまで語った放課後。
リュックにはゲームと参考書。
商店街にある角のキンパ屋。
食べながら歩いて図書館に向かった。

ひとつひとつ僕にとって宝物のような大切な時間。
くだらない話で盛り上がって腹を抱えるほど笑ってたあの日々。
喧嘩をしてもいつの間にか仲直りしてたっけ。

君が好きだと思っていたあの頃。
アレが恋なのか何だったのか今となっては分からない。

君の眼が優しくなった時、彼女の存在を知った。
君は僕のスーパースターだった。
勉強が出来てスポーツ万能で、なのに目立とうとせず控えめで。
でも僕は知っていた。
君が人の何倍も努力してるってこと。

僕はそんなチャンミンが好きだった。
僕はチャンミンに憧れていた。
僕はずっとチャンミンになりたかった。



0 1478



バサバサバサ

「あーーーもう何やってんだよ。相変わらずだな。」

僕が落とした本の一冊をチャンミンが拾い上げる。
本の何冊かは階段から数段落ち、シウォンが「俺が行くよ」と、取りに行った。

「チャンミン…。」

「久しぶり。元気そうだな。」

「…うん。チャンミンは?」

「元気だよ。最近、連絡が途絶えたから心配してた。」

「あ、携帯…無くしちゃって、新しいの買ったから…。」

「そっか…。」

咄嗟に嘘をついた。
何度消そうと思っても消せなかった番号。
高架門の下で川の流れを見ながら携帯を握りしめていた。
あの時シウォンに会わなかったら、僕は携帯を川に投げていたかもしれない。
あれからすぐ機種変更をして番号を替えた。
なのに…チャンミンの番号はずっと残ったままだ。

「これ…まだ諦めてないんだな。」

「え?」

「コンサバター。だから本を借りたんだろ?」

「あ、こ、これは僕じゃなくて、えっと、彼の…彼が借りたやつで。僕の生徒なんだ。」

シウォンの腕を掴み自分の側に引き寄せた。

「そうなの?…君、コンサバターになりたいの?」

「あ、はい。あの、初めまして。チェ・シウォンです。」

「初めまして。シム・チャンミンです。俺、こいつと同級生で。」

「そうなんですか?」

ふと、シウォンの声が低くなったような気がした。

「そうそう。こいつさ、学生の頃ずっとコンサバターになりたいって、留学までしたんだよ。」

「先生が?」

シウォンがビックリした顔で僕を見る。

「お?なんだよお前、先生って言われてんの?そうだよな。先生か~。」

「当たり前だろ。まったく、茶化すなよ。」

「アハハハハ」

相変わらずチャンミンは、何年経っても変わらない笑顔で僕を見る。
僕もついつられて笑顔になった。
こうやって笑っていると昔に戻ったみたいだ。
もしかしたら、またあの頃のように戻れるかもしれない。
チャンミンにならシウォンと僕とのことを話せるかもしれない。
いつか…そんな日が来たらいい。
チャンミンがいて、僕がいて、僕の隣にはシウォンがいて…。

「あのさキュヒョン、今度改めて会わないか?」

「え?」

「久しぶりに積もる話もあるだろ?」

「う、うん。」

不思議な感じだった。
さっきまで会いたくなかったとまで思っていたのに、
自分の中で固まっていた氷が溶け出すかのように時間が流れ始めた。

シウォン…。
僕は今、初めて気付いた。
君という存在がこんなにも大きくなっていたなんて。
君に出会わなかったら僕は今でも臆病のまま。
チャンミンに誘われても断っていただろう。

シウォンと出会ってから僕はずっと支えられてきてたんだ。
シウォンの前で僕は言いたいことの半分も言えてないかもしれないけれど、
それを傍でずっと見て聞いてくれるシウォン。
傍に居て微笑んでくれるだけでこんなに違うんだ。

なのに僕は、チャンミンとまた元通りになれるかもしれない喜びと
シウォンの大切さに気付いたばかりの高まりを落ち着かせるのに精一杯で
小さなシウォンの変化に気付かないでいた。
そして、チャンミンの事も…。

「あ、君…シウォン君だっけ?コンサバターは本気?」

「え?」

「こいつが諦めたぐらいだから、相当大変だと思うよ。その仕事に就くのって。」

「おいおい、お前いきなり何言ってんだよ。」

最初はただの挨拶かと思った。
チャンミンのことだから、『まぁ、大変だと思うけど頑張って』ぐらいの事かと思ってた。

「キュヒョン…」

「え?」

チャンミンが僕の目を見ながら真剣な表情で僕の両腕を掴んだ。

「俺はさ、ずっと気になってたんだ。」

チャンミンに掴まれた両腕にぐっと力が入る。
鳥の群れが巣に帰ろうと一斉に羽ばたき、空に黒の模様が流れる。
鳥達が居なくなった木々は寒々とした枝だけになり時折吹く風に落ち葉が舞った。

「俺はお前を学生の頃から見て来たから分かるんだよ。
あんなに努力して留学までしたのに諦めるって何があったからなんだろ?」

「えっ?お前急に何言って…。」

一瞬、チャンミンが何を言っているのか意味が分からなかった。
シウォンが僕とチャンミンを不思議そうに見ているのは分かった。
なのに急に話を振られた僕は置かれた状況を理解するのに時間がかかった。

「本当はまだ諦めてないんだろ?
なんで急に留学先から帰って来たんだよ。なんで教師になってんだよ。」

「や…めろよ。」

冷たい北風が頬に当たって耳まで痛くなる。
頭がガンガンして、まるで鈍器で殴られたみたいだ。
きっとこれは寒さのせいだと自分に言い聞かせる。
チャンミンの目が真っ直ぐ僕を見つめ、これが冗談じゃない事が分かった。
僕がコンサバターを諦めた理由?
チャンミンがずっと聞きたかった事?
なんで教師になったかって?
留学先の出来事がフラッシュバックして頭の中が真っ白になる。
ついさっきまでの笑顔が消え、チャンミンの表情が険しくなった。

「キュヒョン、俺は…。」

「あの…もう図書館の閉店時間なんですけど…。」

戸惑って固まっている僕の気持ちを察してか、シウォンがチャンミンの言葉を遮った。

「先生、良かったら俺が返して来ましょうか?」

「あ、いや、僕も行くよ。」

チャンミンの手を払い、うつむいたまま目も合わせず階段を登った。

「キュヒョン!」

肩を掴まれ、振り返るとチャンミンが名刺を渡して来た。

「これ、俺の連絡先だから。いつでもかけてきていいから。」

僕の手に残された名刺。
見覚えのある番号。
泣きそうになってコートのポケットに突っ込んだ。
シウォンに「先生、行こう?」と言われなかったら、泣いていたかもしれない。
チャンミンはそれだけ渡すと階段を下り、そのまま姿が見えなくなった。
どうしてこのタイミングでチャンミンがあんな事を言い出したのか。
今度会えるかもしれない時で良かったんじゃないか。
今度?
今度っていつ?
チャンミンは分かってるんだ。
今度いつ会えるか分からないってこと。
チャンミンは何でも物事を考えて言うタイプだ。
今、この話をしたのは何かチャンミンの言いたい事があったんだ。
だけど頭の中はぐちゃぐちゃでそこから先は考えることが出来なかった。

それから僕とシウォンは気まずい雰囲気の中、一言も話さないまま図書館へ向かった。
さっきまでのシウォンとの会話が嘘みたいに僕たちは沈黙したままだった。
ギリギリで返却は出来たが足取りは重く、なんだか鉛を付けられたみたいだ。
僕たちが図書館を出る頃には館内放送で閉館のアナウンスが流れた。
重い扉を開けて外に出る。
図書館の高台から見える高架門には家路を急ぐ車が渋滞を作り、
どんよりとしたグレーの雲が空に広がり今にも雨が降り出しそうだった。
階段まで来た時にポツっと目の下に雨が当たって頬に流れた。

「冷たっ。」

シウォンが立ち止まって僕を見る。

「涙みたいだ。」

「え?」

「先生…さっきのあの人って先生の初恋の人?」











つづく。







[画像はお借りしています。ありがとうございます。]
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高架門で 12



嫌な予感がしたんだ。

幸せは長く続かないって言ってたのって誰だっけ。

…バカだな。
こんな時シウォンなら何て言っただろう。
ウジウジ悩んでる僕を見て熱く語るんだろうな。
幸せの定義?みたいな。

そんな僕を見て

「こんな時はキュヒョナの大好きな甘い物作るから!何がいい?
生クリームたっぷりのパンケーキ?
生クリームたっぷりのパフェ?
生クリームたっぷりのフルーツサンド?」

「生クリームばっかじゃん!」

そんな会話、安易に想像がつく。
きっと、こんな事が幸せって形だったんだ。
ただ一緒に居て笑って、他愛ない会話をして。
隣に居るのが自然で当然で。


ずっと…こうしていたかったのは僕のほうだった。




0 1477



「キュヒョナ?大丈夫か?」

「いってぇ…。」

「破片、入ってない?」

「うん。大丈夫。」


人差し指から滲む血を見て、あの月明かりの教室を思い出した。


「あの時も指を怪我したよね。」

「え?」

「夜の教室でさ…」

「ああ…」


初めてシウォンに口付けしたあの日。
自分が教師という事も忘れていた。
とんでもない事をしたと後ずさった時、
机だか椅子だかにぶつけて人差し指に怪我をした。


「あの時もこうやってキュヒョンの指にキスをした。」

「うん…」


シウォンの唇の触れたところが熱を持ったように疼き出す。
とくん。とくんと心臓の音も大きくなったみたいだ。
同じ事を思い出していただけでこんなにも嬉しいなんて。


「鉄の味がする…」

「キュヒョンの一部だよ。」


シウォンと重ねた唇から自分の味がした。
僕はどれだけシウォンに溺れているんだろう。
このままじゃダメなのに。
いくつになっても成長しない自分を変えたい。
シウォンに出会って切に思うようになった。
僕は何をやっても中途半端で、もっとしっかりした大人になりたい。


「ああ!」

「な、何?」

「今日まで図書館に返さなきゃいけない本があったんだった」

「え?図書館なら、えっと、あと1時間で閉まるけど?」

「ヤバい!」


本当に情けない。
しっかりしようと思った矢先にこれだ。
シウォンに指を手当てしてもらい、割れた皿の破片を片付けてもらった。


「ごめん…」

「何が?」


新聞紙に破片を包み何も無かったのように振る舞える彼を羨ましく思った。
悔しいけどそんなところは本当にスマートで格好良い。
さっきまではご飯を作ってコーヒーを淹れていた。
全部僕の為だ。
本当に18歳なのかと疑ってしまう程だ。
頭の中は情けない自分と格好良いシウォン。
ため息をつきながら本をまとめ身支度をしているとシウォンも一緒に行くと言いだした。


「いいよ。ここで待ってて。すぐ戻るし。」

「いや、一緒に行く。なんか今日のキュヒョン変だし。」

「変て。誰かに見られたらどうすんだよ。」

「何も。図書館だろ?」

「そうだけど…。」


全く、肝が座ってると言うか、僕より全然大人みたいだ。
クローゼットからネイビーのダッフルコート取り出し慌てて羽織る。
その上からマフラーをぐるぐる巻くとシウォンが可愛いと髪に頬ずりをしてきた。


「ちょ、やめろって時間が。」

「キュヒョナが可愛いからいけないんだよ。」

「はあ?」


最近はいつもこうだ。
僕の事を可愛い可愛いと暇さえあれば抱きついてくる。
前言撤回。
誰が大人みたいだって?やっぱりまだまだ子供だ。
まとわりつくシウォンを自分から離し急ぎ足で玄関に向かった。
待ってとシウォンが僕を呼び止めキスをする。


「時間無いのに。」

「外に出たらもう出来ないだろ?」


シウォンの温かい唇が心地良い。
おでこにちゅッとされるとなんだか恥ずかしくてくすぐったくなった。
本当はもうこのままで良かった。
部屋に引き返して二人でゆっくり借りてきたDVDでも観てたかった。
もしも僕がここでシウォンに抱きついてたら間違いなく図書館には行かないんだろうな。
そんなモヤモヤした気持ちでドアを開けた。
アパートから一歩出ると冷たい風が顔に当たる。


「寒っ。」


日も暮れ出し街灯が所々点き始めていた。
にこにこと微笑みながら僕の後をついてくるシウォン。
本当に嬉しそうで、シウォンの顔を半ば呆れながら見て高架門の土手を二人で歩いた。

柊の緑が目につくこの季節はもうすぐクリスマスを迎えようとしている。
レンガ造りの教会の前を通ると賛美歌が聴こえてきた。


「可愛い歌声だね」


子供達がシスターに見守られながら歌っている。
僕も小さい頃はよく教会へ通っていた。
そんな事を思い出し、僕たちは教会の裏にある高台の図書館へ続く階段を登った。
階段の中腹は緩やかにカーブを描いている。
視線を感じシウォンを見ると優しい顔をして僕を見ていた。


「な、何?」

「いや、キュヒョンて教会が似合うなって。」

「はあ?」

「くっくっくっ。」

「なんで笑ってんだよ。」

「想像したから。」

「何を?」

「いろいろ。」

「何だよ色々って。」


ふと、シウォンが足を止めた。
シウォンの真っ直ぐな瞳がゆっくり隣に並んだ僕を見つめる。
立ち止まったまま数秒時間が流れた。
僕はシウォンを見つめたまま身動きが取れないでいた。
心臓の音が早くなっているのが自分でも分かる。
ゴクッと鳴らした喉はマフラーで聞こえてないと思う。
シウォンがフッと微笑み口を開く。


「二人でタキシードかな…とか。」

「は?な、な、何?何言って。」

「耳まで真っ赤だよ?」

「なるよ。耳まで真っ赤になるだろ!」

「今ここで抱きしめたい。」

「なっ!こ、これ以上変な事言ったらもう口聞かないから。」

「口聞いてくれないの?」

「うるさいっ!!」


顔を真っ赤にして階段を一段ずつ飛ばしながら上った。
僕はここから見える景色が好きだ。
まさかここでシウォンにこんな事言われるなんて思ってもみなかった。
ひしめき合った家の前の曲がりくねった道。
至る所にある坂や階段。
春に綺麗な花を咲かせる桜の木。
振り返ると高架門。
僕は今日シウォンと一緒に見たこの風景を忘れない。
照れながらも二人で早歩きで階段を上っていると上から一人の男が降りて来た。


「あれ?もしかしてキュヒョン?」

「え?」


顔を上げると見覚えのある顔。


「キュヒョンじゃないか。」

「チャンミン!!」


久しぶりに聞いた声。久しぶりに見た懐かしい顔。
彼の名はシム・チャンミン。僕の学生時代の親友だ。







つづく。






[画像はお借りしています。ありがとうございます。]